「
山路を登りながら、
かう考えた。
智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、
安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、
詩が生まれて、畫(え)が出來る。
・・・・・・・・
We look before and after And pine for what is not:
Our sincerest laughter With some pain is fraught;
Our sweetest songs are those that tell of saddest thought.
「 前をみては、後えを見ては、物欲しと、あこがるるかなわれ。
腹からの、笑といえど、苦しみの、そこにあるべし。
うつくしき、極みの歌に、悲しさの、極みの想、籠るとぞ知れ 」
なるほどいくら詩人が幸福でも、
あの雲雀のように思い切って、
一心不乱に、前後を忘却して、
わが喜びを歌う訳には行くまい。
・・・・・・
」
ピアニスト
グレン・グールドが
「二○世紀の小説の最高傑作」と評価した
夏目漱石 草枕 より
山路を登りながら、
かう考えた。
智に働けば角が立つ。
情に棹させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、
安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、
詩が生まれて、畫(え)が出來る。
・・・・・・・・
We look before and after And pine for what is not:
Our sincerest laughter With some pain is fraught;
Our sweetest songs are those that tell of saddest thought.
「 前をみては、後えを見ては、物欲しと、あこがるるかなわれ。
腹からの、笑といえど、苦しみの、そこにあるべし。
うつくしき、極みの歌に、悲しさの、極みの想、籠るとぞ知れ 」
なるほどいくら詩人が幸福でも、
あの雲雀のように思い切って、
一心不乱に、前後を忘却して、
わが喜びを歌う訳には行くまい。
・・・・・・
」
ピアニスト
グレン・グールドが
「二○世紀の小説の最高傑作」と評価した
夏目漱石 草枕 より
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